捕まる事件
エピソード1

弟1号の体験である。

弟1号はその日、繁華街のゲームセンターで遊んでいた。
すると、突然現れた
警察官2人に囲まれた
警察官「僕、ちょっと交番まで来てくれるか」
弟1号「えっ?!」
警察官「向こうの店のことで聞きたいことあるんよ」
警察官はアーケードの中の店を指さした。
弟1号「??? 僕、あの店へは行ったことないですけど」
警察官「すまんけど、交番来て話聞かせてくれ。あの店、さっき
強盗入ってな、そいつが白いコート着とったって、店のおっちゃん言よるんや。そんな遠くに行ってないと思う」
弟1号は白いコートを着ていた。

警察官は弟1号を疑っている。
何しろ、弟1号は江戸時代で言うところの「島帰り」のような顔つきだ。
色黒(天然。日サロではない)で、異常に目つきが鋭い。
はっきり言って、ヤバイ顔なのだ。
犯罪者ヅラである。
疑われるのも無理はない。
高校時代はその顔つきから担任教師にヤバイヤツと目を付けられていたのだ。
そして大学生となった現在は無口と凶悪な顔で女生徒から恐れられている。

今にも弟1号が交番へ連れて行かれそうになったとき、客の一人が言った。
「おまわりさん、その人、僕とずっと対戦ゲームしとったけん、あの店には行っとらんよ」
他にも同様の証言をする者が相次いだ。
警察官は弟1号に「スマンスマン」と謝って去っていった。

こんな凶悪な顔の弟1号であるが、守銭奴であることを除けば、異常に気弱で、恐がりで、少しの悩みで食欲が落ち、胃腸が弱く、賞味期限を少し過ぎたものを食べただけで下痢を起こしたり、小学生の頃から十二指腸潰瘍を患い、冷凍肉まんを電子レンジで15分温めてにしたり、20歳をすでに過ぎているにも関わらず、タバコを隠れて吸うというまあまあいいヤツである。
なぜこんなに気が弱いかはよく分からない。
海外で足裏マッサージを受けたところ、全くの健康体にもかかわらず、「
アナタ、心臓ヨワイネ」と診断されたらしいが、確かに強心臓とは言えない。
本人は私のような姉を持ったせいだと主張している、
しかし、『エンジェル伝説』の北野君のような存在であることは確かだ。

エピソード2

次は私の体験である。

その日、私は友人達と一緒に香港でショッピングを楽しんでいた。
と言っても、金もないのでブランドものを買うような余力はない。
ショッピングビルで本を買いあさったり、CDを見たりしていた。
その後、「まあ、話の種に行ってみるか」と免税店DFSギャラリアへ。
特に買う物はないが、内部をだらだらと見て回った。


さて、DFSを出て、向かいのスーパーへ行こうとしたときである。
ピンポンピンポンピンポン
けたたましい警報音が鳴り響いた。
万引き防止の警報機に引っかかったのだ。
なぜだ!
誓って万引きはしてないぞ!
何も買ってないし!!
受付のお姉さんが流暢な日本語で「大丈夫、こちらに来てください」と私を引っ張る。
おまけに、お姉さんは警備員のおじいさんに「ちょっと、おじさん、来てよ!」と広東語で叫んだ。
おじいさんがひょこひょことやってきて、「大丈夫、大丈夫だから」と広東語で繰り返す。
友人達は真っ青である。
全然「大丈夫」ちゃうやん

そして、持ち物チェックである。
当然ながら、怪しいものや免税店の商品は一切出てこない。
私はレシートをちゃんともらう方なので、もし何かあってもどこで買ったか証明できる。
ふふふ。
来るなら来い、警備員のじいちゃん!! そして受付のお姉ちゃん!

とりあえず、怪しいものは出てこない。
当然だが。
すると、おじいさんは「荷物、警報機の所へ通してもらえるかな」と語りかけてきた。
私は拘束されているので、友人が私のバッグを警報機に近づけた。
鳴らない。
次に、紙袋を近づけた。
これが大当たり。
けたたましく
ピンポンピンポンが始まった。

「紙袋の中のもの、見せてもらえるかな」とおじいさん。
「大丈夫だからね」とお姉さん。
二人は紙袋の中身を床に出し始めた。
ああ〜、そんなにむちゃくちゃに引きずり出さないでくれ〜。
さっきのショッピングビルできれいに整頓して持ち運びしやすくしたのに〜。


しばらく荷物をチェックしていた2人が、揃って声を上げた。
おじいさん「
うおぉっ!!
お姉さん「
キャアァッ!!

なぜそんなに驚くんだ、おじいさん、お姉さん!
私、変なものでも入れていただろうか。
まさか、知らないうちに
麻薬入れられてて、それが見つかったなんてことはないよねえ??
友人も私も真っ青である。


おじいさんとお姉さんが、床の上のものを見て固まっている。
そのブツとは、私が先ほど本屋で買ったもののうちの2冊である。


全裸の筋肉質の男性2人が白いシーツを掛けたベッドで激しく絡み合っている表紙の本と同じく全裸の女性2人が白いシーツを掛けたベッドで仲むつまじくいちゃついている表紙の本である。
ここで弁解させていただくが、決していかがわしい本ではない。
いくら香港が無修正のエロ本を許可している楽しい都市だからと言って、そういうものを買う趣味はないのだ。
表紙は刺激的だが、内容は全部英語で、各界有名人の同性愛に関する見解とか、詩とか、そういうものである。
オスカー・ワイルドやアンディ・ウォホールやヴァージニア・ウルフなどなどの見解が書かれていた。
日本ではなかなかお目にかかれないと思い、買ったのだ。
なにしろ、欧米では同性愛を宗教で禁じているから、そうおおっぴらに発言できることではない。
そのことから珍しく思ったのだ。


しかし、表紙を見ただけでおじいさんとお姉さんは全機能を停止してしまった。
無理もない。ちょっと表紙がアレだ。
私も本屋で買おうか買うまいか悩んだ品である。
そして、本屋のレジを担当しているイギリス系と思われるロングヘアのロックな兄ちゃんに「ワォ! 君が買うの? コドモには向かない本だよ!」と言われたのである。
ああ、お願いだ。
固まらないでくれ、2人とも!


やがて、正気を取り戻したおじいさんが警報機に指で嫌々ながらつまんだ本を近づけたところ、見事にピンポンピンポンピンポンと鳴った。
どうやら、本屋のバーコードと免税店のバーコードが同じであったために、ここのレジでチェックされていない本屋のバーコードが警報機に反応して鳴ったようだ。


原因が解明された後、おじいさんとお姉さんは「ゴメンね、時間取らせちゃったね」と去っていったが、後に残された私と友人たちは衆人環視の中に置き去りにされた。
そして、めちゃくちゃに引き出された荷物をバッグや紙袋に詰めなければならなかった。


ホモ好き窃盗容疑をかけられて身を滅ぼしかけたなどと、親には口が裂けても言えない……。


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