暴れ牛が少女を襲う事件 |
これは高校時代の友人であるAMちゃん(女性、仮名)の体験談である。 彼女は幼い頃、北海道に住んでおり、彼女のおじいさんとおばあさんは牧場を営んでいた。 彼女はその牧場で牧歌的生活を送っていた。 あるとき、大人達は牧場に何本か生えている銀杏の木から実を採取するために、それぞれに木に登っていた。 どうやら、実を落とすために木に登って木を揺すっていたらしい。 そして、AMちゃんのお母さんが木の上から彼女を呼んだ。 母「AMちゃん、実を入れるから、大きな袋を持ってきてくれる?」 AM「うん、分かった〜」 AMちゃんは急いで倉庫に行くと、そこにあった一番大きな袋を手に取った。 彼女は息を切らせて母親の元に戻ってきた。 そのとき、彼女はふと異様な気配を感じたのである。 「フグォッ!」 大きな鼻息が背後から聞こえた。 振り向くと、そこにいたのは牛だった。 彼女は早く戻ろうと焦るあまり、放牧場の柵を越えて横切ってしまたらしい。 牛は「フゴフゴ」と鼻息も荒く徐々にAMちゃんに近づいてきた。 「ぎゃぁあ〜〜〜〜!!」 彼女は驚いて、放牧場を出ようと躍起になった。 ところが、逃げようとしたその先にも別の牛が迫ってきたではないか! 彼女はほとんど囲まれてしまった。 まさしく、「前門の狼 後門の虎」。 この場合は牛だが。 しかし、何とか牛の隙間(?)を突いて彼女は走った。 だが、所詮は幼児の逃げ足である。 4本足の牛に勝てようはずもない。 しかも、逃げるごとに彼女の背後のドスドスという足音と荒い鼻息は増えていった。 5頭ほどの牛(AM談)が彼女の背後に迫っていた。 彼女は別に赤い服を着ているわけでもない。 そして、もちろん持っている袋が赤いわけでもない。 「なぜだ」 彼女は理解できぬままに爆走した。 まさに単独牛追い祭り状態である。 そのとき、木の上にいる母親の声が聞こえた。 「AMちゃん、袋を捨てなさい!!」 しかし、AMちゃんにはそれが理解できなかった。 「この袋を届けずして、一体どうするというのだ」 彼女は必死に放牧場を走り抜け、何とか柵を越え、安全地帯に飛び込んだ。 彼女は牛の鼻息から逃れ、その場にへたり込んだ。 手にはしっかりと袋を握っている。 おお、平安の時間が彼女を包み始めたではないか。 牛から逃れた彼女は英雄にも等しい。 ゼイゼイと肩で息をする英雄。 母親はそんな英雄に木の上から声をかけた。 「あんたが持ってるのは牛の餌が入ってた袋だよ〜。それさえ捨ててりゃ牛は追ってこないんだよ〜」 AMちゃんのお母さん、早くそう言ってあげてください。 |
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